仕事。先輩が下のフロアから、両手で大量の荷物を運んでる。荷物の中から、洗剤のキュキュットがぽろっと地面に落っこちたので、拾う。
先輩「ありがとう〜恋始まるやつかな」
私「始まらないやつです」
先輩「定期券だと始まったかもね」
私「洗剤、とても厳しい戦いですね」
定期券にはロマンがあるから、恋が始まるんでしょうか。刻印された個人情報+お金入ってる小さい板+定期入れの柄のことを、ロマンというのでしょうか。
「ロマン」(コトバンクより引用)
主情的ないし理想的に物事をとらえること。また、そのようにして把握された世界。
定期券から「理想のあなた」を把握するってこと?
キュキュットは生活。どうせロマンの先にあるのは生活なんだから、最初から生活の出会いでもいいのでしょうか。そういえば『花束みたいな恋をした』の麦と絹の出会いは、トイレットペーパーだった。
トイレットペーパーなんて生活の最たる象徴で。なのに、あの映画で描かれるトイレットペーパーは明らかにロマンでしかなかった。
だったら生活もロマン。ということは、ロマンも生活であり。定期券(ロマン)から滲み出る生活は、確かにあるような気がする。
何を言いたいのか、よく分からなくなってきた。毎日、何を言いたいのか、よく分からない。大切なものを落としたら、勝手に恋が始まるので。恋したい人は、どんどん大切なものを落とせばいいんです。
私は落とし物で始まった恋を、一度も見たことがない。今日は車の中にボールペンを落とした。鎌倉文学館で買った栞は、どこで落としたかも分からない。